材料を選定する時によく「ヤング率が高い材料は硬い」や「部品強度を上げるためにヤング率の高い材料に変更しよう」といったような言葉を耳にすることがありませんか?
このとき、何となく材料強度に関する事なんだろうと予想はついても、そのヤング率をどう使うのかまでは知らないという設計者は多いと思います。
というのも、流用設計が多い会社とかだと1から材料選定する事がなかなか無く、ヤング率を意識してない設計が多いからです。
しかしヤング率を上手く利用することで、強度の強い部品設計をすることができるので、ここではヤング率(縦弾性係数)とは何か?や機械材料としてどう利用するのか?といったところを、設計初心者にも分かるように解説していきます。
ヤング率(縦弾性係数)とは?
ヤング率とは、物体の応力とひずみの比例を表す関数で縦弾性係数とも呼ばれます。ヤング率が高いほど強く壊れづらい材料ということになります。
計算式で表すと\(E=\dfrac{\sigma }{\varepsilon }\) となります
- \(E=\)ヤング率\([Pa]\)
- \(\sigma=\)応力\([Pa]\)
- \(\varepsilon=\)ひずみ[単位なし(伸び量/元々の長さ)]
ヤング率や応力の単位は \(N/m^{2}\) で表されることもあり、その場合は \(1Pa=1N/m^{2}\)となります。
またひずみに単位がないのは伸び率を表しているからです。(以下参照)
ヤング率は応力ひずみ線図からも読み取れます。
下の図が応力ひずみ線図ですが、ヤング率は弾性域における傾きを示しており、この傾きが緩やかだと柔らかい材料、急だと硬い材料となります。
※弾性域とは応力を受けても、その応力を取り除けばひずみも無くなる領域のことです。輪ゴムは軽く伸ばしただけだとすぐに元の長さに戻りますよね?それと同じことが起きているのが弾性域です。
塑性域はひずみが戻らないほど強い応力を受けた場合に適応されます。この塑性域ではヤング率は適応されません。
ヤング率で何が分かるの?どう利用するの?
ヤング率は硬さを表します。
硬い=変形しづらいということなので、力が加わる部品を設計するときにヤング率を考慮します。
ヤング率の違いによっては、下図のようにヤング率が高い材料は、曲げなどの応力に強くなります。
例で言うと、力を受ける部品に鉄(S45C)を用いていたが、軽量化の為にアルミ(A5052)に変えた場合はどうなるでしょうか?
S45Cのヤング率は205GPaに対し、A5052のヤング率は68GPaと約1/3のヤング率なので、ひずむ量も約3倍になります。
力を受ける部分は安易に軽量化しないように注意しましょう。
良く使われる材料のヤング率一覧
ヤング率は材料ごとに決まっており、設計者はその数値をもとに材料硬さを判断します。
代表的な材料とヤング率は以下の表をご確認ください。
材料 | ヤング率( GPa ) |
SS400 | 206 |
S45C | 205 |
S50C | 205 |
SCM435 | 205 |
SKD11 | 207 |
SKD61 | 210 |
SPCC | 192 |
SUS304 | 193 |
SUS440C | 204 |
SKH51 | 219 |
A5052 | 68 |
A7075 | 72 |
超硬 | 450~650 |
ダイヤモンド | 1000 |
ヤング率が高いほどひずみは小さくなりますが、その分脆く欠けやすくなります。
例えばダイヤモンドはヤング率が1000GPaとかなり高いですが、比較的割れやすいといった特徴があります。
超硬にも同じことが言えるので、何でもかんでもヤング率が高い材料を選べばいいというわけではなく、用途に適した材料を選択するようにしましょう。
コメント