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衝撃力と衝撃値の違いと簡単な計算方法

「衝撃力に負けない部品設計」の為に必要な計算式 機械設計の知識

組立機での設計で、「ワークを組み立てる際に、ワークを反対側から押さえる部品が衝撃に負けない(しならない)ようにすること」と指示をされることがあります。

これは組み立て時に部品がしなってしまうと、そのしなり分の寸法に”バラつきがでてしまい、不良の原因になってしまうからです。

この時、まずは部品にかかる衝撃力を計算する必要がありますが、設計初心者にはなかなか難しい問題です。

”衝撃力”ってどうやって計算するの⁉必要な数値は何?

そこでこの記事では、”衝撃力の計算方法”を設計初心者の方でも分かるように解説します。

衝撃力は衝撃値Gが必要

衝撃力を導くには、その前に”衝撃値”を求める必要があります。

衝撃値とは?

衝撃値とは、「物が動いている状態から止まるまでの速度変化を、かかった時間で割った値」のことで、単位はGで表されます。

Gと加速度との関係は以下になります。

\(1G=9.8m/s^{2}\)

次に衝撃値と衝撃力、それぞれの計算方法を説明します。

衝撃値の計算式

衝撃値Gは次の式で表します。

衝撃値\(G=\dfrac{v_{1}-v_{2}}{\Delta t}\div 9.8\)

  • \( v_{1}= \)衝突直前の速度 \(\left[m/s\right]\)
  • \( v_{2}= \)衝突後の速度\(\left[m/s\right]\)(大抵の場合0)
  • \({\Delta t}= \)衝突時間\(\left[s\right]\)(\(v_{1}\)から\(v_{2}\)にかかる時間)

※\(9.8\)で割るのは単位をGにするためです。

この式から分かるように、衝撃値の計算には”速度”と”時間”が必要になります。

衝撃力の計算式

次に衝撃値を求めます。

衝撃力 \( F\left[N\right]=m\times (G\times 9.8)\)

  • \(m= \)衝撃物の質量\(kg\)
  • \(G= \)衝撃値

※ \(G\) に \(9.8\) をかけると加速度 \(a\)となります。これにより \(F=ma\)の運動方程式が成り立ちます。

ここで気付いた方もいると思いますが、衝撃値Gと衝撃力Fは次の1つの式にまとめることができます。

衝撃力 \( F\left[N\right]= \dfrac{ m\times(v_{1}-v_{2})}{\Delta t} \)

この”1つにまとめた式””衝撃値Gを出してから衝撃力Fを導くやり方”は好みによって使い分けしてください。

個人的には、 ”衝撃値Gを出してから衝撃力Fを導くやり方” の方が順序立てて分かりやすいですね。

衝撃力の計算例

では実際にどういった計算結果になるのか、例を挙げてみます。

車が衝撃した場合

”質量500kgの車が時速100km(27.78m/s)で壁に衝突し、0.5秒後に停止した”場合の衝撃力を求めてみます。

  • \( v_{1}= 27.78\left[m/s\right] \)
  • \( v_{2}= 0\left[m/s\right]\)
  • \({\Delta t}= 0.5\left[s\right]\)
  • \( m = 500\left[kg\right] \)

衝撃力\( F= \dfrac{ m\times(v_{1}-v_{2})}{\Delta t} )\)より、

\( F = \dfrac{ 500\times(27.78-0)}{0.5} \)

\( F = 27,780\left[N\right] \)

計算結果は \( 27,780\left[N\right] \)、つまり\(2835 \left[ kg \right] (2.84 \left[ t \right] )\)になります。

ボールネジでワークを押し付ける場合

次にボールネジ機構を使ってワークを押し付けて組み立てる場合の衝撃力を求めてみます。

条件は以下の通りです。

  • ボールネジ速度 \(100\left[mm/s\right]\)
  • 押し付け時間 \(0.05\left[s\right]\)
  • ワーク組付けに必要な力 \(F_{1}= 100\left[N\right] \)

1つ目の車の例と違うのは、衝突物の質量が無い代わりに、”ワーク組付けに必要な力\(F_{1}= 100\left[N\right] \)”という数値があるということです。

この場合は、まず \( F_{1} \left[N\right] \) を \( m\left[kg\right] \) に変換する必要があります。

運動方程式\( F = mg \)を利用すると、\( m=\dfrac{F}{g} \)となります。

これに各数値を入れると、\( m=\dfrac{100}{9.8}=10.2 \left[kg\right] \)に変換することができます。

つまり、

衝撃力\( F= \dfrac{ m\times(v_{1}-v_{2})}{\Delta t} )\)より、

\( F = \dfrac{ 10.2\times(0.1-0)}{0.05} \)

\( F = 20.4\left[N\right] \)

計算結果は \( 20.4\left[N\right] \)、つまり\(2.08\left[kg\right] \)になります。

また衝撃値から導く方法で表すと、以下のようになります。

衝撃値\(G=\dfrac{v_{1}-v_{2}}{\Delta t}\div 9.8\)より、

\(G=\dfrac{0.1-0}{0.05}\div 9.8=0.204\)

衝撃力 \( F\left[N\right]=10.2\times (0.204\times 9.8)\)

\( F = 20.4\left[N\right] \)

計算結果は \( 20.4\left[N\right] \)、つまり\(2.08\left[kg\right] \)となり、先ほどと同じ結果になりました。

これにより以下の式が成り立ちます。

衝撃力\(F=F_{1}\times G\)

この例のように、ワークを組付けたり挿入したりする場合、それに必要な力が判明していれば簡単に衝撃力を求めることができます。

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