調整ボルトやショックアブソーバーのタップには細目ねじが使用されていることがあります。
細目ねじってなに?細目ねじにはどういう役割があるの?
新人設計者はかならずこの悩みにぶつかります。細目ねじの使用頻度はそこまで高くはありませんが、設計者には必須知識となります。
この記事で細目ねじについて詳しく解説するので、設計の参考にしてください。
細目ねじの特徴
細目ねじの読み方はJISによれば”ほそめ”になりますが、現場では”さいめ”と呼ばれることもあります。
細目ねじはねじ山の間隔(ピッチ)が細かいという特徴があります。
細目ねじのメリット
緩みづらく衝撃に強い
ねじはねじ山のリード角が小さい方が緩みにくいので、リード角の小さい細目ねじは並目ねじにくらべて緩みづらくなります。
また細目ねじはねじ山が小さいのでその分軸が太くなります。軸が太いことで並目ねじよりも破断しづらくなります。
これらの特性により、振動や衝撃を受ける箇所に細目ねじが採用されるパターンもあります。
微調整ができる
細目ねじはリード角が小さいので、1回転させた時に進む量が並目ねじよりも少なくなります。これはねじの出量を微調整したい”位置決め用ねじ”で有利に働きます。
細目ねじのデメリット
入手性が悪い
細目ねじは特殊ねじに分類されるので、社内で在庫を持っていない場合がほとんどです。ホームセンターなどにも中々売っていません。
MISUMIでは最短で翌日に届くものもありますが、機械を動かすために今すぐ欲しい!という時には困ってしまいます。
また細目ねじは流通量が少ないので、並目ねじよりも若干割高な価格となってしまいます。
付け外しで多く回転させなければならない
細目ねじはリード角が小さいので、1回転させた時に進む量が並目ねじよりも少なくなります。そのため、ねじを付け外しする時により多く回転させなければなりません。(微調整したい場合はメリットになりますが)
作業性が悪く工具が入りづらい場所で何回も回転させるのは、作業ミスにも繋がるので作業者にとっても良くありません。
かじり、焼き付きが起きやすい
細目ねじはピッチが狭くねじ山も小さいため、タップにゴミが挟まったままねじを締めつけてしまうとゴミとねじ山で摩擦熱が発生して焼き付いてしまいます。焼き付きまでいかなくてもかじりが発生してねじ山が潰れてしまうので、細目ねじを締める際はエアブローでタップ穴やねじのゴミを除去しましょう。
細目ねじの用途と注意点
細目ねじはメリットがある反面デメリットもあるので、「なんでもかんでも細目ねじを使えばよい」というわけにはいきません。細目ねじでなければならない箇所に限定して使用しましょう。
私の知っている範囲ですと、細目ねじは以下の用途で限定的に使用されます。
- スライド機構のストッパーとして、細かい位置決めをするための位置決めボルト
- 衝撃を受けるシリンダ固定用ねじやショックアブソーバー
- 振動を強く受ける車やバイクの部品固定用ねじ
また細目ねじを使う時の注意点として、ピッチ指示を図面に書くことを忘れないようにしましょう。
一般的な並目ねじのタップの場合だと加工図面には”M5”と書くだけでよいのですが、細目ねじのタップはM5×0.5と書く必要があります。この×0.5はピッチのことで並目の場合は0.8になります。
「図面に書くのを忘れて部品を作り直す」という失敗は、設計者なら一度は経験すると言っていいほどよくあります。特に3Dから部品図にバラす時に”このタップは細目である”という情報が抜けやすいです。
対処法としては「細目タップの部品の3Dモデルの色を変えておく(パッと見で分かる赤など)」や「タップに取り付けるものが在庫のねじではなく、なにかしらの購入品の場合は細目ねじか確認する」という意識付けやルール化をする方法が効果的です。
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