はめあい公差って初見だと意味わからないですよね。
私も初めは「H6?js7?なんだそれ?何の意味があるの?」状態でした。
しかしはめあい公差は、製造業の設計者は必ず理解しておく必要がある大事な公差で、この公差を間違ってしまうと部品が組み立てられない問題へと発展してしまいます。
そこでこの記事では、「はめあい公差ってなんぞや?」ってところを初心者にも分かりやすく解説します。
はめあい公差とは「軸と穴(または凹凸)のスキマ量」を示したもの
軸を穴に通す目的は、主に以下の2つがあります。
- 軸が抜けないように、穴にがっちりと固定したい
- 軸が摺動できるように、穴と軸に隙間を確保したい
これらを区別するのが“はめあい公差“です。
このはめあい公差を図面で適切に指示することで、それぞれの目的に合った軸と穴が出来上がります。
もしもこのはめあい公差の指示が不適切だと、次のような問題が発生してしまいます。
- 軸を固定したいのに穴がスカスカで、軸が固定されない
- 回転軸なのに穴がきつ過ぎて回らない
こういった問題を防ぐために、設計者は“正しいはめあい公差の決め方“を知る必要があります。
はめあい公差は主に3種類に分類される
はめあい公差は用途によって次の3種類の”はめ方”に分けられます。
- すき間ばめ
- しまりばめ
- 中間ばめ
すき間ばめ
軸が穴より細く、隙間があるはめあいのこと。
軸は穴から簡単に分解できます。
しまりばめ
軸が穴より太く、強く圧入するはめあいのこと。
1度圧入したらほぼ抜けないので、軸を穴から外したい時はどちらかの部品を壊さないと分解できません。
中間ばめ
すき間ばめとしまりばめの中間的はめあいのこと。 (軸と穴にごくわずかな隙間がある~ハンマーで叩けば入る程度の圧入)
部品を壊すことなく分解可能ですが、圧入の程度によってはハンマーで軽く叩く必要があります。
はめあい公差の記号と数値の意味
はめあい公差は、アルファベットと数字の組み合わせで出来ています。
でも「どのアルファベットと数字組み合わせればいいのかがややこしい!なにを基準に選べばいいの? 」ってなりますよね…
かなり多くの組み合わせがあるはめあい公差ですが、普段使うのはそのうちの一握りだけです。
全部覚えるのは不可能なので、常用するところに絞って覚えておきましょう。
アルファベット記号の意味は公差域の位置
アルファベットの記号は公差域の位置を表し、A~ZCの28種類あり、後ろにいくにつれて公差域が0から遠くなります。(穴は広く、軸は細くなる)
標準的な記号としては、軸と穴の隙間量が0~になるHが基準寸法としてよく使われます。
数値は公差の等級
数値は等級を表し、1~18等級まであり数字が小さくなるほど高精度が要求されます。
ベアリングなんかで、数値が小さい等級の方がより精密ですよね?それと同じです。
一般的なはめあいは6~10等級といわれ、その中でも6,7等級は頻繁に使用されます。
はめあい公差の決め方
では実際にはめあい公差を決定するには、「何を基準に考えればよいか」を解説します。
※細かいはめあい公差一覧はMISUMIさんのページで見ることができるので、そちらも参照ください。
”すき間ばめ”での公差の決め方
許容されるガタを超えない隙間に設定します。
例えば摺動するスライダーのガタが0.05mmまで許容される場合は、はめあい公差が0.05mm未満になるようにする、といった感じです。
”しまりばめ”での公差の決め方
しまりばめの場合、プレスで圧入するのか、”やきばめ”をするのかで必要な公差が変わるので、実際に組み付ける現場で実現可能な方法から決めましょう。
当たり前ですが圧入量が大きすぎると、圧入するのに多大な手間と時間がかかってしまうので注意してください。
”中間ばめ”での公差の決め方
中間ばめに関しては、実際に加工してみないと「隙間があるのか圧入なのかが決まらない」ので少しやっかいです。
「ギリギリの隙間を狙ったけど、実際は軽く圧入しないと軸が入らない(#^ω^)」といったことが起こるのが中間ばめです。
ただ位置決めのノックピンを想定する場合は、最悪隙間できてしまっても、接着剤で固定するという方法もあります。
細かい公差の決定方法ですが、結局のところ細かい公差は用途や業界、場合によっては現場ごとに異なるので、一概に正解はありません。
ただしどのはめあいにもH6~7(h6~7)付近の公差がよく使われるので、まずはこのはめあい公差を基準に考え、あとは実績値や加工コストなんかを考慮して決めましょう。
※はめあいのプロであるベアリングメーカーのカタログなんかは参考になります。
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