部品図面を書くとき、「メッキ厚」を公差に含むかどうか悩みますよね。
「加工寸法だとメッキの厚み分で部品も厚くなるし、かと言ってメッキ後の寸法だと加工公差はどう決めるのだろう?」という疑問は、設計者なら一度は考えたことがあると思います。
私自身も、“メッキ厚を公差に含むか“は昔から疑問だったので今回調べてみました。
JISでの決まりはあるの?
色々と探してみたのですが、図面寸法が“加工寸法なのかメッキ後の寸法なのか“の決まりに関する記載はJISでは見つかりませんでした。
もし情報をお持ちの方は、是非教えて頂けると幸いです。
ただメッキ厚に関しては一般的な厚みは決まっているので、そこからある程度の加工寸法は出せそうですね。
Twitterでの意見
Twitterで意見を募ってみたところ、「メッキ厚を公差に入れる派」の方が多く、「メッキ厚は公差に入れない派」は少数でした。
メッキ厚を公差に入れる派
図面は最終寸法を記載するのが一般的なルールとしてあり、メッキも含んだ公差にすべきという意見です。
確かに設計者としては、実際に出来上がる部品の寸法である「メッキ後」の公差を決めるべきですね。
図面への記載方法としては以下の方法です。
- ”メッキ後寸法”と注記を入れる
- ”メッキ前寸法”と”メッキ後寸法”の両方を入れる
ただし、このようにメッキ後寸法だけを記載した場合は、加工業者がメッキ厚を差し引いた公差の判断をすることになるので、加工費が少し割高になることもあるそうです。
メッキ厚を公差に入れない派
少数派ですが、図面公差はあくまでも加工寸法であり、メッキ厚は公差に含めないという意見もありました。
メッキ厚を公差に入れないのには以下の理由があります。
- メッキ厚は不規則で設計では把握しきれないから
- 部品加工とメッキ処理は別々の業者にお願いしており、両者の調整が必要になるから(=納期が伸びる)
- 最終的には組立時にシムなどで調整すればいいから
メッキ厚は変動するものなので、その都度加工業者やメッキ業者とやり取りが必要になりそうですね。
ただメッキ厚を公差に入れない場合、組み立ての段階で調整が必要となってしまいます。
実際私も昔、摺動部のスキマがメッキで無くなってしまい、メッキが剥がれる限界まで磨きまくった、なんてことを過去に経験してます…
まとめ
今回分かった事は以下になります。
基本的に図面公差はメッキ後であるべき。
ただし部品加工とメッキ処理が同じ業者であることが現実的な条件であり、業者が違う場合ではメッキ処理前の公差表記+別途メッキ厚の指定が必要。
その際は両者の間で調整が必要なので、費用や納期に影響あり。
確実に言えることは、どちらの場合でも設計者は自分で指定したメッキの膜厚を正しく知っておく必要がありますね。
また一般的なメッキ厚は「メッキ 膜厚一覧」で調べれば、メッキ屋さんのサイトなどで見ることができるので、きちんと理解して設計しましょう。
コメント
JIS_B_0001:2019 (機械製図) 11寸法記入方法、11.1一般事項に『図面には、特に明示しない限りその図面に図示した対象物の仕上がり寸法を示す』とあります。よって図面寸法はメッキ後の寸法が示されます。