「直動ガイド」といえば、まずはリニアガイドを思い浮かべるという人が多いと思います。
しかしリニアガイド以外にも様々な直動ガイドが機械設備では使用されています。
それぞれの直動ガイドには特徴があり、その特徴を理解し適材適所に使用するとができれば設備の品質アップや低コスト化に繋がります。
そこで本記事ではよく使用される直動ガイドの種類と使い分け方法を分かりやすく紹介します。
ブッシュやボールスプラインなどの直動軸のガイドに関しては、以下の記事を参考にしてください。
リニアガイド
直動ガイドと言えば、まずはリニアガイドを思い浮かべる人が多いと思います。
LMガイドと呼ばれることがありますが、LMガイドはTHKの商標で、一般名称はリニアガイドとなります。
レールとブロックが組み合わさっており、ブロック内部にあるボールがレール上を転がることで低摩擦、高精度の直線運動を可能にしています。
取り扱っているメーカーが多くサイズや種類が豊富なので、様々な直動箇所で使用されています。
ただしレールやボールは瞬間的な衝撃に弱く最悪の場合損傷してしまうことがあるので、衝撃が加わる箇所は後述するすべりガイドが適しています。
スライドレール
リニアガイドの安価版のような位置付けの直動ガイドです。
机や食器棚の引き出しなどで使用されているので、他の直動ガイドに比べて日常生活で目にすることの多いガイドです。
産業機械では精度を必要としない箇所(廃棄ボックスを設備から引き出す部分や、タッチパネル等の操作盤をスライド部)に利用されています。
スライド部はローラーやボールの転がり軸受けとなっており、軽い力で重量物をスライドさせることができます。
ただしガイドとしての精度はあまり高くなく、引き出した状態ではたわみも発生するので、高精度な位置決めが必要とされる箇所では使用できません。
しかしその分取付けもラフに行うことができるので、複数軸を組み付ける際にリニアガイドのように「レール同士を0.01mm単位で水平に合わせる」ような作業までは不要です。
すべりガイド
すべりガイドは他の転がり軸受けのガイドと違い、すべり軸受けのガイドになります。
すべりガイドは点で受ける転がり軸受けと違い面で受けるため、耐荷重や剛性が高いのが大きな特徴です。またリニアガイド同様、高速でのスライド動作が可能です。
そのためスライド部に大きな荷重や衝撃が加わるような場面では、リニアガイドの代わりにすべりガイドが使用されます。
例えば部品がスライドしてワークを曲げたり、切断するような衝撃がレール部に加わる箇所では、リニアガイドだとガイド部が破損してボールが飛び散るトラブルが起こることがあるので、そのような箇所はすべりガイドが適しています。
精度はレール部とガイド部の隙間量に直結します。
経験上、□30mm程度のスライダーで0.005mmほどの隙間量が最小値です。
この隙間量を出すには現物合わせで部品を削ったり磨いたりする作業が必要不可欠で、さらに高速にスライドさせる場合は焼き付き防止のためスライド面に定期的な給油も必要になります。
なので高精度を必要とする箇所でのすべりガイドは他ガイドに比べて、部品を組み付けるスキルや管理する工数がかかる傾向があります。
直動ガイドの種類と使い分けのまとめ
直動ガイドの種類と使い分け方法を以下の表にまとめます。
リニアガイド | スライドレール | すべりガイド | |
精度 | 高精度 | 低精度 | 高精度 |
使用速度 | 高速度 | 低速度 | 高速度 |
メリット | ・高い許容荷重 ・低摩擦 ・長寿命 ・サイズ、種類が豊富 | ・低コスト ・簡単組付け | ・高耐荷重 ・衝撃に強い |
デメリット | ・衝撃に弱い ・定期的な給油 | ・低精度 ・伸びた状態では先端でたわみが発生 | ・隙間管理が必要 ・メンテナンス不足による焼付発生 |
それぞれのガイド方法の特徴をもとに、正しい直動ガイドを選定できるようにしましょう。
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