スプリングピンとは部品の締結や位置決めなどに使用されるピンのことで、ノックピンを中空にして切れ込みを入れたような形状をしています。
この2つは形状や用途が似ており、「どう使い分ければいいのか分かりづらい」問題があります。
ここではスプリングピンとノックピンの違いと使い分けを解説します。
スプリングピンの用途
スプリングはその形状からバネ性があり、穴に圧入された後に径方向にひろがろうとする力でスプリングピン自体がセルフロックされます。穴に固定されることである程度の衝撃を受けてもピンが抜けないメリットがあります。
また穴に圧入する際に外径が穴に合わせて縮むので、ノックピンのような精度穴は必要無く単純なドリル穴にも使用することができます。
- 部品同士の簡易的(~1/10mm)な位置決め
- ストッパー
- ヒンジの軸
一方ノックピンは穴公差によってはちょっとした衝撃でも抜けてしまうので衝撃部での使用は不可になりますが、圧入穴が公差穴であることから高精度の位置決めが可能です。
- 高精度(1/100mm~1/1000mm)な位置決め
スプリングピンの使い方
スプリングピンを圧入する穴はドリル穴でもOKです。
例えばミスミさんのφ6のものだと直径が6.2~6.4mmなので、φ6のドリルの穴でも使用できます。
(スプリングピンの穴径はJISで規定されており、φ6の場合+0~+0.15が推奨範囲ですのでドリルでも十分ということですね)
ただ、スプリング力を最大限利用する目的で6.00狙いのφ6H7と指示する場合もあります。
H7程度の精度であればそこまでコスト増にならないし、穴面もきれいに仕上がります。
また圧入する穴は基本的に貫通穴にしてください。
スプリングピンにはノックピンのようなタップ穴付きタイプは無いので、ピンを引っこ抜くことはできません。(よっぽどピン頭が出てて、かつ径が太ければペンチで掴んで抜けるかもしれませんが、現実的ではないですね…)
圧入方法はノックピンと同じでハンマー等でスプリングピンの頭を軽く叩きながら圧入します。
ただしスプリングピンはノックピンより変形しやすいので、スプリングピンの頭をつぶさない力で叩きましょう。
スプリングピンを抜く場合も基本的にはノックピンと同じで、ピンポンチを使いスプリングピンが穴を通り過ぎるまで叩いて抜きます。
スプリングピンの種類
スプリングピンには大きく分けてストレート形と波形の2種類に分かれています。
それぞれ得意分野が異なるので選定の際は注意しましょう。
それぞれ解説しますが、次の表で用途別に向き不向きを記しています。(ノックピンは参考に載せてます)
位置決め | ストッパー | ヒンジ | |
ストレート形 | 〇 | 〇 | △ |
波形 | 〇 | × | 〇 |
ノックピン | ◎ | × | 〇 |
ストレート形
スキマが縦一直線(ストレート)な見た目が特徴のピンです。
波形に比べ衝撃への負荷に強いため、簡易的な位置決めの他にストッパーとしても利用できます。
耐衝撃強度を上げたい場合はストッパーピン内部に径の小さいストッパーピンを入れ込む”ダブルピン”という使い方もあります(ダブルピンに似ている”スパイラルスプリングピン”という製品もあるそうです)
またダブルピンにする際は外側と内側のピンの隙間の向きは揃えない方が強度的に有利になります。
波形
スキマがジグザグの波のような見た目が特徴のピンです。
円周部に必ずスキマが発生するストレート形に比べ波形は円周全体が常に穴面に接触するため、ピン回転時にピンと穴面が引っ掛かりづらく、ヒンジ等の回転部への使用が適しています。
ただし衝撃力に対しては、波の部分で”切り欠き効果”が発生し非常に小さい力でも破損する恐れがあるので、力のかかる衝撃部での使用は避けましょう。
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