機械設計の仕事をしていると、「この仕事きつすぎ!」と爆発してしまいそうになることが多々あります。
機械設計者は文句を言われることが多い…
— こうちゃ@機械設計ブログ (@MC_CRAFTOR) September 29, 2020
「もっと加工しやすい形状にできないの?」
「こんな機械使いづらいじゃん」
じゃあ設計者は誰に文句を言えばいいの?発注元の顧客?スケジュール決めた人?
設計者は言われた文句を溜め込むしかありません。
これが離職率の高さに繋がってる😇
↑のようにTwitterで愚痴をぶちまけたら、多くの方に共感していただきました。
やはり同じ悩みをもつ機械設計者は多いようですね...
そこで、機械設計の仕事に興味がある方や、現在進行形で辛い思いをしている機械設計者に向けて、私が実際に”今までに経験したきつかった事”と”どうやって乗り切ったか”を紹介します。
機械設計できついと感じるところと解決法
現役の機械設計者の私が今までにきついと感じたことは以下になります。
- 設計が終わった後から文句やダメ出しをされる
- 業務改善を押し付けられる
- 現場の事を知らないと良い設計ができない
- 常に勉強不足だと実感する
色々と思うところがあるので、順に紹介していきます。
解決方法も併せて書いてますので、ぜひ目を通してみてください。
設計が終わった後から文句やダメ出しをされる
問題点
この経験をした設計者はかなりの割合でいるでしょう。
出図した後や機械が組み上がった後に「ここの設計ってダメじゃない?」と他部署から言われる事が往々にしてあります。今さら言われても困る内容でも、他部署の人は関係無しに文句を言ってきます。
しかもほとんどの場合悪いのは設計のだと押し切られてしまい、改善方法を考えるのも設計者がするはめになります。確かに設計スキルが低いという問題がありますが、だからと言って設計者に押し付けられても何も改善しません。
大切なのは他部署含め、経験やノウハウを設計者にあらかじめ伝え、最初の段階の設計の完成度を上げることです。しかしこれにはノウハウを伝える仕組みが必要で、そのような仕組みが無い会社だと設計者任せの仕事しかできない=設計が完成間近にならないと他部署に情報が回らず、後出しの文句しか言えなくなります。
この問題は結構頻繁に起こるので、「どんな設計をしても、どうせ必ず後から文句を言われるんだろ…」という不満が積もりに積もって、機械設計が嫌になってしまう設計者が多くいます。
解決法
後から文句を言われないようにするには、やはり事前の確認、相談が重要になってきます。
設計構想の時点で予想できるトラブルを潰しましょう。設計者側でできる解決方法には具体的には次のような方法があります。(本来なら会社として設計前~設計中に問題ないかをチェックできる仕組みがあればいいのですが、多くの場合「設計者の確認が甘い!」で済まされてしまいますのでこのような自己防衛が必要です)
- 過去トラの見直し
- 過去の類似案件の担当者への聞き取り
- DRで各部署に問題が無いか徹底的に確認をとる
- 不安点は自分で抱え込まずに必ず相談する
事前に不安点を周りに相談しておくのは結構重要で、後々問題が発生しても対応できるように、周りの部署もあらかじめ対策をしておくことができます。
事前に問題点をどれだけ見つけられるかは、設計者の腕の見せ所でもあります。
業務改善を押し付けられる
問題点
多くの会社では”不具合を減らすため”や”納期短縮をするため”などの名目で、業務改善活動が行われます。様々な部署が参加して、「どうすれば業務改善できるか」の会議をするのですが、この会議がいつの間にか”設計部門へのダメ出し会”になることが往々にしてあります。
「設計ミスがなければ不具合対策も無くなる」
「調整しやすい設計にすれば調整時間の短縮に繋がる」
「設計が出した見積りが正確じゃないから利益も少ないんじゃない?」
↑上記は実際に会議で言われた内容で、酷いときだと「我々(製造部)は設計通りに動くしかないから、改善内容は設計で考えてよ」とも言われました…
その結果、改善活動の案出しから計画、実施までのすべての工程を設計部の主導でするハメになりました。
確かに機械設計は仕事の流れでいうと上流工程に位置するので、その設計の良し悪しがその後のQCDを左右するのは間違いないです。が、だからといって全ての責任を設計に押し付けられても「なんで自分らばっかり⁉」となりますよね。
何度も「設計部以外の部署は完璧なんですか?改善できるところは全く無いってすごいですね!」と言いたいのを堪えるのに必死でした(笑)
解決法
業務改善活動が上手く機能しているかは、会社の風土によるところが大きいです。
変な言い方にはなりますが、設計部の権力が大きければ「何でもかんでも設計部に押し付ける」なんてことは起こらないだろうし、逆に権力が無いような会社だと上記のような問題が起こってしまいます。
この問題の解決法は次の2つです。
①優秀なコンサルに入ってもらい、改善活動を建設的なものにしてもらう
②会社に見切りをつけて、もっと良い会社へ転職する
①は優秀なコンサルであれば、特定の部署のみ負荷がかかるような改善活動は避けつつ、部署を横断して問題に取り組んだり、改善活動を主導してくれます。ただし運悪く力量不足のコンサルが来てしまうと、結局は力の強い部署の言いなりになってしまうので期待はできません。
なので一番確実な解決法は、さっさと今の会社に見切りをつけて転職する②の方法です。「きっといつか会社がよくしてくれるだろう!」なんて思う方もいると思いますが、会議体の改善や業務量の改善なんかを訴えても大抵の会社ではスルーされてしまいます。だってそのような問題があったとしても、現状成り立ってしまっているから…
転職活動をしてみたら分かると思いますが、今の会社より働きやすい会社なんて山ほどあります。特に機械設計はある程度の経験さえあれば在宅で働くこともできます。今の会社に固執せずに、一度は広い視野で業界全体を見てみることをお勧めします。
現場の事を知らないと良い設計ができない
問題点
現場の人から「お前ら設計者は現場の事を知らなさすぎる」という文句を言われたことはありませんか?
私が新人の頃は、設計ミスをする度によく言われました。しかし設計側の言い訳としては、現場の事を全く考えていないわけではありません。
設計者は常に「この部品の加工法はこうで、ここの機構の動き方はこうだろう」と想像をしながら設計業務を進めます。この想像が当たるか外れるかはその設計者の知識や経験によるところが大きく、若手の頃はよく失敗しました。
解決法
この問題の1番の解決方法は、積極的に現場に顔を出し、機械に問題が無いか作業者にヒアリングすることです。
現場の知識を得るためには、実際に自分の目で「自分の設計に問題が無いか」や「設計者では気付けないような困りごとが無いか」を確認するのが1番有効です。中には現場から雑談や相談を受けたりするようなこともあり、それを積み重ねていくことで「現場の事をよく知っている設計者」という印象を持たれます。
その結果、現場からの印象も良くなるし、実際に組み上がっていく機械を観察することで勉強にもなり知識も増えます。
常に勉強不足だと実感する
問題点
設計者は常に勉強不足、知識不足に悩まされます。
「もっと知識があったら設計が楽になるのになぁ」とか「あれ、ここってどうやって加工すればいいんだ?」など、設計者は常に悩みながら設計を進めます。製造業は教育がOJT寄りなので、自分から学ばないと中々知識は増えません。さらに機械設計者は機械の知識だけではなく電気、制御、部品加工など様々な知識を必要としますが、これらを丁寧に教えてもらうのは難しく自ら学ばないといけません。
また携わる案件によっても知識に偏りがでてしまうので、長年設計者として働いていても知らない事が結構多くあります。
解決法
この問題の解決方法は、分からない事を分からないままにしないことと、”他部署の知識を得る”ことを重点に勉強することをおススメします。
どうしても設計業務だけをずーっとしていると、視野が狭まり作業の繰り返しになってしまいがちですが、他工程(例えばハード設計や加工など)の勉強をすると、新しい発見をたくさん見つけることができます。その新しく得た知識を設計業務にフィードバックすることで、機械設計者としてもスキルアップすることができます。
「どういう制御をするんだろう?」や「この部品の加工はできるのか?」などの悩みにかける時間は結構馬鹿にならないので、この時間を無くすことはコスト削減にも繋がります。
どんどん視野を広げて、様々な知識を取り込みましょう。
設計に集中できる環境だと機械設計は楽しくなる
以上に機械設計できついと感じるところを紹介しましたが、この中でも特に問題なのが次の2つです。
- 設計が終わった後から文句やダメ出しをされる
- 業務改善を押し付けられる
この2つの問題は設計者の技術うんぬんより、会社側に問題があります。そしてこの問題は解消される希望はかなり薄いです。
このような会社の設計者は常に不満たらたらの状態なので、良い設計なんてできるはずも無くモチベーションも上がりません。周りの雑音や設計外の業務が多すぎて設計に集中できないことで、本来好きなはずのモノづくりや機械設計を楽しめない状況です。
何度も述べましたが大きな問題でも起きない限り、会社は仕組みを変えたり特定の部署の業務改善をすることはありません。
この状況を打破しつつ、好きな設計の仕事をするには自分の居場所を変えるのが一番確実です。具体的には次の4つの方法があります。
- 他のメーカーへ転職する
- 設計事務所へ転職する
- 独立してフリーランスになる
- CADオペレーターへ転職する
1.他メーカーへの転職は一番やりやすい方法です。同じような業種であれば前職の知識やスキルが役立つので、年収もUPしやすいです。ただ設計に集中できる環境かは重点を置いてリサーチしないと、今回の悩みを繰り返してしまいます。(参考記事:機械設計エンジニアが転職で失敗しない方法)
2.設計事務所への転職は一番おすすめです。設計事務所であれば基本的に設計部以外の部署は無いので、面倒な他部署とのやりとりや業務改善を押し付けられることもありません。ただし顧客とのやりとりは必要ですし、ある程度の設計スキルは必要になるので、設計者としての経験を積んでからでないと転職は難しいです。
3.独立してフリーランスは難易度は高いですが、成功すれば年収もかなりあがりますし、そもそも自分1人だけの会社なので今回のような他部署関係の悩みも無くなります。前職で顧客との繋がりを確保し、仕事が確実に貰える状態であり、自分のスキルに自信のある人は挑戦してみるのも手です。
4.CADオペレーターへの転職は仕事内容が少し変わりますが、機械設計の経験を生かしつつストレスを減らすには結構有効な手です。また設計スキルのあるCADオペレーターはかなり需要があります。(参考記事:機械設計エンジニアからCADオペレーターへの転職がドンピシャな理由)
2~4は会社によっては在宅でも仕事ができるので、人によっては会社にいるよりも集中して仕事ができます。
せっかく機械設計が好きなんだったら、気持ちよく働ける場所で働きましょう。
コメント
そういう社会にしている日本の闇ですよね
根本的考え方や嫌がらせ体質をなくさない限り
誰もやりたがらないですよね