ばねは機械設備の必須アイテムですが、計算して選定する必要があります。
ここではそんなばねの計算方法を解説します。
圧縮ばねの計算方法
圧縮ばねの計算に必要な項目は以下になります。
- ばね定数 k(N/mm)
- 許容たわみ量 (mm) または 許容荷重 (N)
またばね力を求める計算式は次になります。
ばね力(N)= ばね定数k (N/mm)× たわみ量(mm)
ばね定数にたわみ量をかけるだけの簡単な式ですね。
実際に下図のように「ばねの力で垂直方向に1kgの物体を10mm持ち上げる」といった使用例で計算してみます。
まずは上昇させる力を求めると1kg=9.8Nなので最低でも9.8Nの力のあるばねが必要になります。
圧縮ばねは圧縮されてない方が力が弱いので、この場合だと上昇した所で最低9.8Nの力が必要になります。
また10mm上昇なので許容たわみ量は10mmより大きい必要があります。ただたわみ量を上昇ストロークぎりぎりに設定してしまうと上昇しきらない可能性もあるので、上昇後でも5mm圧縮されている状態にします。すると必要なたわみ量は15mmになります。
5mm圧縮されている状態で9.8Nが必要になるので、これを先ほどの計算式に当てはめると必要なばね定数が分かります。
9.8 = k × 5
k = 1.96(N/mm)
これで必要な数値が求まったので、あとはカタログで”ばね定数1.96(N/mm)以上、かつ許容たわみ量が15mmより大きいばね”を探せばOKです。
例えばこのばねをミスミで探すと”WT5-45”がばね定数2.0(N/mm)、許容たわみ量15.8mmなので合致しますね。
引っ張りばねの計算方法
引っ張りばねの計算に必要な項目は以下になります。
- ばね定数 k(N/mm)
- 許容たわみ量 (mm) または 許容荷重 (N)
- 初張力(N)
またばね力を求める計算式は次になります。
ばね力(N)=初張力(N)+ ばね定数k (N/mm)× たわみ量(mm)
圧縮ばねの計算式との違いは初張力を足すところのみです。初張力は引っ張りばね特有のもので、密着状態のばねを引き離すのに必要な力のことです。この初張力を越える力で引っ張らないとばねは伸びません。
先ほどと同じように「ばねの力で垂直方向に1kgの物体を10mm持ち上げる」を例に計算してみます。今度は上から物体を引っ張って持ち上げるのでばねは上側に配置します。
圧縮ばねと同じく、まずは上昇させる力を求めると1kg=9.8Nなので最低でも9.8Nの力のあるばねが必要になります。
引っ張りばねは引っ張られていない方が力が弱いので、この場合だと上昇した所で最低9.8Nの力が必要になります。
また圧縮ばねと同じように上昇後でも5mm引っ張られている状態にします。必要なたわみ量は15mmですね。
5mm引っ張られている状態で9.8Nが必要になるので、これを先ほどの計算式に当てはめます。
9.8 = 初張力 + k × 5
引っ張りばねは圧縮ばねと違い、変数が”ばね定数”と”初張力”の2つあるので一発で求めることができません。カタログを見つつ”初張力”と”k×5”を合わせた数値が9.8(N)を超える組み合わせ、かつ許容たわみ量が15mmより大きいばねを探す必要があります。
例えばこのばねをミスミで探すと”AWF-6-50”がばね力11.28(N)(※初張力5.88(N)、ばね定数1.08(N/mm)より)、許容たわみ量16.4mmなので合致しますね。
ばね選定の注意点
ばねは需要が決まっている消耗品なので、簡単に交換できるように設置しましょう。場合によってはグリスアップもするのでメンテナンス性も気を付ける必要があります。
寿命の目安となる使用回数おおよそ100万回で設定されているものが多いですが、たわみ量が大きい場合は30万回まで減ったりしますので注意が必要です。
圧縮ばねの注意点をまとめた記事もあるので合わせてご覧ください。
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